弁護士監修記事

【弁護士監修記事】小規模事業者のカスハラ対策「これって強要罪になるの?」

楽しく働くドットコムへようこそ!本日は、小規模事業者さん必須の知識「カスハラ対策」について、弁護士さんに質問してきました!
べるこさん
べるこさん

カスハラとは?

顧客からの度を越えた著しい迷惑行為のことをカスハラ(カスタマーハラスメント)と呼ばれています。

このカスハラにおいては、パワハラ、セクハラ等と同様に、「顧客等からの著しい迷惑行為の防止対策の推進に係る関係省庁連携会議」にて、各省庁が議論を行うとともにカスハラ防止対策を進めています。

消費者庁消費者教育推進課長
厚生労働省医政局医事課長
厚生労働省医政局看護課長
厚生労働省医政局歯科保健課長
厚生労働省雇用環境・均等局雇用機会均等課長
厚生労働省老健局認知症施策・地域介護推進課長
農林水産省新事業・食品産業部外食・食文化課長
経済産業省商務・サービスグループ消費・流通政策課長
経済産業省商務・サービスグループサービス政策課サービス産業室長
国土交通省総合政策局交通政策課長
(オブザーバー)
警察庁生活安全局生活安全企画課都市防犯対策官
法務省人権擁護局人権啓発課長
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課

抜粋資料:顧客等からの著しい迷惑行為の防止対策の推進に係る関係省庁連携会議 開催要綱

警察とかも動いてくれてるみたいで、心強いわよね
めるみーちゃん
めるみーちゃん
べるこさん
べるこさん
ほんとそれ!今までは「自分が我慢しなきゃ」とか、迷惑クレーマーの圧に押されて「自分が悪かったのかなあ」って思ってしまってましたから・・

国会・各省庁・地方自治体もカスハラ対策に本腰

まだ「カスハラ」という概念がなかったほんの数年前までは、私も含めて理不尽な顧客の迷惑行為に耐え忍んでいた方が多くいらっしゃいました。

しかし、昨今では「カスハラ」という認知が広まり、国会はもとより、札幌市、東京都もカスハラ条例の制定に動き出しています。

このように、迷惑顧客(カスハラ)に対する議論が活発化した今、カスハラを放置していると事業者も責任を問われてしまいかねません。

カスタマーハラスメントに係る犯罪、違法行為を理解する

厚生労働省のHPでは、事業者向けマニュアルをダウンロードできるようになっており、私もさっそく入手して「カスハラ行動指針」なるものを作成してみました。
べるこさん
べるこさん

カスタマーハラスメント対策企業マニュアルには、どのような事例がカスタマーハラスメントに該当するのか?また、同マニュアルのP10には、カスハラに該当する行為が、どのような法律に接触するのかが掲載されていますので是非参考にされてみてください。

事業者のみなさまは、関連法律を理解しておくことで、いざとなったとき、堂々とこれは「カスハラだ」と判断できることかと思います。

とはいえ、その判断がつかないから、事が大きくなるんですよね😢
べるこさん
べるこさん

特に、小規模事業者が悩むPOINTとして、「ヤクザの脅しのように恐喝されたわけじゃないから、この程度は我慢すべきなのかなあ・・・・」という部分ではないでしょうか?

「強要罪」「不当要求」のあたりがピンときていないため、

✅クレームとして対処すべき案件なのか?
✅迷惑行為として拒絶すべき案件なのか?

判断に迷う事業主さまが多いようです。

そこで、これまで見聞きしてきた事例をあげ、弁護士さんに聞いてきました💡
べるこさん
べるこさん

強要罪・不当要求・カスハラの判断に迷う事例

事例1|Aさんのケース

サービスを提供した後に、『うちの税理士が、そのサービスは高すぎると言っているので、そのサービスに広告費がどれくらいかかって、人件費がどれくらいっかって、原価はいくらでというふうに、サービスの価格設定の内訳を送れ』と言われた。

事務所の光熱費や、人件費、広告費などかかっていると丁寧に説明すると、『私は広告から申し込んでいないし、事務所にも行っていないのに、私から広告費や光熱費を取るのはおかしい』と言いがかりをつけられ、呆れてものが言えなかった。

サービスの内訳ならわかるんですが、価格設定の内訳を送る義務ってありませんよね!これって強要罪では?(怒)

弁護士の回答

すごい話ですね(汗)。おっしゃるように、サービスではなく事業の経費を開示する義務はないと思います。

人と人とのビジネスについては、契約自由の原則が妥当します。

つまり、「契約を結ぶかどうか」「どのような内容の契約にするか」は、当事者同士が決めて良い、という原則です。

「契約を結ぶかどうか」自体が自由ですので、顧客側も「高すぎる」と思うならその事業者と契約しなければ良い話であって、価格設定の内訳を知る必要性はありません。

したがって、価格設定の内訳を教えろ、という要求をすることに合理性はなく、これに対応する義務もないと思います。

一方で、刑法上の強要罪は、脅迫または暴行を用いて人に義務のないことを行わせまたは権利の行使を妨害した場合とされています。

したがって、このケースで顧客側が教えなければ危害を加えると言ったり、殴ってきたりしたということであれば強要罪に該当し得ます。

”危害を加えるぞ”的なことをチラつかせてきたら”強要罪になる”っちゅうことね。メモメモ
めるみーちゃん
めるみーちゃん

事例2|Bさんのケース

顧客に善意で提供していた無料のコミュニティで顧客同士の揉め事が発生したので、コミュニティを閉会したところ、「違法行為」だと言って揚げ足を取り出し、次々と、こちら側に債務のない(法的義務のない)言いがかりをつけられ、返金を要求された。

自分達が揉めて空気を悪くして、アンケートをとったら、継続したいという人は誰もいなかったのに、やめたらやめたで、違法行為だといってお金を返せとはひどすぎます。

しかも、「では、気を取り直してコミュニティやりましょうか?」と提案したら「もう気分わるいから今更やらない」と自分で言ったんです。

しかもですよ!その人、そのコミュニティ、「私はつるむのいや」とか言って、そもそも入ってないんですよ。(怒)

これは強要罪にあたりますか?

弁護士の回答

こちらに落ち度がないのに言いがかりをつけて返金要求をしてくるというのは「カスタマーハラスメント」と言われる事例です。
上記のとおり、その顧客が脅迫とか暴行により義務のない返金要求をしてきたのであれば強要罪に該当します。

”落ち度も法的義務もないのに、難癖つけて返金要求する”のは、”カスハラ”っちゅうことね。了解しました!(”◇”)ゞ
めるみーちゃん
めるみーちゃん

事例3|Cさんのケース

こちら側に落ち度がなく、法的義務のない言いがかりをつけられ、お電話で真摯に対応したにも関わらず、「事務所に行ってあいつを懲らしめる」と周囲に言っていることが判明した。こちらに落ち度があるならまだしも、落ち度も法的義務もないことで、何時間もお電話で真摯に対応しているのに、直接会う必要性のないことで、会わなきゃいけない意味がわからない。これって強要罪でしょうか?

弁護士の回答

クレームに対して真摯に対応したにもかかわらず、何度も面会を求めてくるというのは、カスタマーハラスメントと言われる態様のひとつです。

まだまだ世間の認識では「お客様は神様」と思っている人が多いのかもしれませんが、契約というのは、対等な当事者である顧客と事業者との間で行われる、価値(例えばお金とサービス)の「等価交換」です。

したがって、「お客様は神様」などでは全くないことを、双方が強く意識してほしいところです。

上で述べてきましたが、ご質問にある刑法でいうところの「強要罪」は、手段としての脅迫または暴行という行為が必要になる狭い概念です。

カスハラに該当するクレーマーに、どのような「態度」をとるべき?

上記の①~③のようなクレーマーには、経営者としてどのような態度をとるのが適切なのか?教えてください。

弁護士の回答

厚生労働省が出している「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」によれば、「顧客の要求内容が妥当性を欠く場合」とか、「手段、態様が社会通念上不相当」である場合も含め、カスタマーハラスメントとされています。

具体的には、暴行や脅迫はもちろん、威圧的な言動執拗な(しつこい)言動も、カスタマーハラスメントにあたります。

こうした行為を繰り返す顧客については、刑法上の強要罪だけでなく、名誉毀損罪、侮辱罪、業務妨害罪、不退去罪、また刑事に限らず民事上の責任追求などさまざまな切り口での対応を検討すると良いと思います。

不当要求とは何か?

似たような意味合いの言葉に「不当要求」というもがありますが、「不当要求=強要罪」という理解でよろしいのでしょうか?

弁護士の回答

この不当要求というのは、カスタマーハラスメントという言葉が世に出る前からあった言葉です。

不当なクレームなどを含む、広く反社会的な行為を指す言葉でした。

強要とか恐喝とは言えないけれどもやはり不当な行為として対応が必要と考えられていた概念です。まさに今で言うカスタマーハラスメントという定義に近いものと理解していただければ良いと思います。

今日の感想

弁護士さんに質問してみて、モヤモヤがすっきりしました。

これまでは、お金を払ってくれているお客さんだからと思い、じっと耐えてきた事業主さんや、圧に押されて、落ち度も法的義務もないのに「自分が悪かったからこんなことになってしまったのかも・・」と弱気になる方も多かった事かと思います。

しかし!時代は変わりました!

峯岸優子弁護士がご指摘するように、「お客さまは神様」なのではなく、「契約」とは「価値」の「等価交換」であって、お金を払ってもらったからといって、一方が耐え忍ぶ必要はなく、本来は「対等」な関係なんですよね。

各省庁や地方自治体もカスハラに対する動きを活発化していますし、迷惑顧客のガイドラインが制定されたことで、判断に迷い、傷口を広げてしまう事業主さんも減ってくることかと思います。

厚労省HPにあるガイドラインに、あなたの行為はカスハラとありますと示しつつ、NO!と言ってやってください。
べるこさん
べるこさん

とは言え、私の経験上、悪質な顧客って「話してわかる人」じゃないから悪質なのです。ですので、まずは、弁護士さんに相談することをおすすめします。

事業者さんもお客さん側になることもありますし、カスハラのガイドラインを知らないと、自分が法令違反やハラスメント行為で訴えられることもあるかもしれませんよね。

どちらの立場になっても、相手を思いやり、お互い気持ちよく取引したいものです。

峯岸優子先生、ありがとうございましたm(__)m

記事監修|峯岸優子 弁護士
(第二東京弁護士会所属)
埼玉県出身・早稲田大学卒業

弁護士業務の傍ら、ご自身も、オンラインサロン・経営者コミュニティ・ヨガ同好会を運営されている起業家でもあるため、同じ経営者目線で経営者の気持ちに寄り添ってくださる、頼りになる先生です。

峯岸優子弁護士の詳細情報
弁護士峯岸優子ドットコム