モンスター社員(モンスター)スタッフを抑止するために
近年、ニュースでよく目にするバイトテロ。具体的には、アルバイトの飲食店スタッフが、バズりたいがために、不衛生な行動をX(旧twitter)に投稿するなどが後を絶ちません。
あのような、企業に大打撃を与える問題行動は、謝って済まされる問題ではありませんよね。企業のイメージダウンもいいとこです。
私も経営者として、スタッフによる不正や問題行動に悩まされたことは勿論ありますし、父と叔父が経営していた会社でも金銭がらみの問題はありました。
また、私が若い頃にアルバイトしていた高級クラブでも、黒服が、お会計をごまかしてキャバクラで散財していてクビになっていました。しかも、とても面倒見がよく愛想も良い方で、お客さんにも人気があり、ママも信頼していた方だけに「あんないい人がそんなことを・・・」と、とてもショックでした。
事業主としては、問題が起きてしまったらどう対処するかはもちろん大事ではありますが、問題が起きないように抑止していくことが最も大切です。
そのためには、企業の服務規程や就業規則を理解させ、禁止行為をしないという旨の誓約書をとることが重要です。さらに、身元保証人もつけることで、問題行動を事前に抑止することが重要です。
これは、企業の営利活動に置きかえるならば、顧客に対して「カスタマーハラスメント行動指針」を示し、罰則が設けられた利用規約に同意させることに値します。
採用時に、身元保証人をつけることで、「何かあったとき、身元保証人さんへ連絡いきますよ」という無言の圧力が、犯罪の抑止力になることかと思います。また、万が一、損害を被った際には、身元保証人へ損害賠償の請求をすることも可能ですよね。
とは言え、実際に身元保証人さんへ損害賠償を請求する事態になった方はさほど多くはないかと思いますので、いざとなったとき「身元保証書って、本当に役立つの?」などなど疑問でいっぱいですよね。
また、損害賠償の限度額だったり、色々と制約もあるみたいなので、弁護士さんに聞いてみました。
記事監修|峯岸優子 弁護士
(第二東京弁護士会所属)
埼玉県出身・早稲田大学卒業
弁護士業務の傍ら、ご自身も、オンラインサロン・経営者コミュニティ・ヨガ同好会を運営されている起業家でもあるため、同じ経営者目線で経営者の気持ちに寄り添ってくださる、頼りになる先生です。
峯岸優子弁護士の詳細情報
弁護士峯岸優子ドットコム
弁護士が教える身元保証書の注意点
従業員を雇い入れるとき、親族などから身元保証契約書を提出してもらっている会社も多いと思います。万が一、従業員が会社に損害を与えたというときのために、請求できる相手を増やしておくのはリスクヘッジになります。
ただし、身元保証は、身元保証人になった人に対し、思った以上に重い責任を負わせることになるおそれがあるため、法律で規制されています。
①身元保証の期間について、契約書によっても上限は5年までとされ、自動更新は認められません。期間経過ごとに、再度契約することが必要になります。
また
②身元保証期間中、従業員に業務上不適任なことなどがあり、身元保証人に責任が生じる恐れがあることを知ったときや、従業員の業務に変更がありそのために身元保証人の責任が重くなるなどの場合には、会社から身元保証人に通知をする必要があります。これに応じて身元保証人からの契約解除もできるようになっています。
さらに
③改正民法の施行により、2020年4月1日以降は、責任を負う賠償額の上限を契約書に明記しなければならなくなりました。
ちなみに、2020年4月1日の前にした身元保証契約には、この上限の規制はかかりませんので、今すぐ作り直さなければ無効というわけではありません。
ただ、現行の身元保証契約期間が終わる時には、新しい身元保証契約書に損害額の上限額を書き入れるという変更をお忘れないようにしてください。
身元保証書で気を付けるべきこと
- 身元保証書の上限は5年まで(自動更新不可)
- 身元保証人に責任が生じる恐れがあるときは通知する
- 賠償額の上限を契約書に明記する
峯岸優子弁護士に質問
4月から民法の改正により、身元保証書に損害賠償額の上限額(極度額)を記載がないと、その身元保証書は「無効」とのことですが、一般的な賠償額の上限はどんなかんじなのでしょうか?年収を限度にすることをすすめている社労士さんもいるようですが、時給のパートさんの場合はどうなりますか? 一般的な相場観や目安がわかりません。
峯岸優子弁護士の回答
雇用の際、従業員に、身元保証人を求めている企業もあると思います。2020年4月から民法の改正により身元保証書に損害賠償金の上限額を定めていないと、その身元保証契約は無効になるというルールができました。
上限金額には法律上の規制はありませんが、あまり高すぎると、身元保証人になる人がいなくなって本末転倒ですし、公序良俗に反して無効となる可能性もあります。
ではいくらが相当額なのか、についてですが、従業員の給与やリスクの程度などによりケースバイケースでしょう。身元引受人を引き受けやすい金額である必要を考えると、一般的には、新人であれば1年分の給与額相当額とか、一般的には、50万円から300万円以内くらいの間なのではないでしょうか。
私の個人の意見になりますが、多くの場合、身元引受人は、従業員の親などの個人が引き受けているのが現状だと思います。そのため、もしその親も無資力であれば結局回収できないリスクが残ります。
つまり、身元保証なんて、担保としては安全なものとはいえないのです。
ですので、経営者の皆さまには、「身元保証の極度額を高く設定しよう」と考えるよりも、各種保険に入るなどのリスクヘッジをしていただいたほうが安全だと思います。
社員やパートさんの業務上の過失は、個人に責任を負わすものではなく会社の責任になると認識しています。したがって、身元保証書に書く損害賠償の対象とは、横領だったり、盗撮だったり、反社会的行為をされて被った被害に対する損害賠償という意味で間違ってないでしょうか?
峯岸優子弁護士の回答
身元引受人に請求できる損害賠償とは、「反社会的行為をされて被った被害」には限りません。従業員の過失により会社が被った損害も含みます。
他方、ご質問にあるように、会社の従業員の故意・過失で、第三者が損害を被った場合、第三者に対しては、会社も責任主体となります。
ただ、当の従業員自身が責任を負わないわけではなく、会社が第三者に賠償金を支払った場合には、その従業員に対して、求償といって金銭の請求を行うことができます。
会社から、支払った損害額をどこまで従業員に求償できるかについては、損害全体の1/4程度という判例があります。1000万円の損害額であれば250万円です。
これは、ご質問者のおっしゃるように、会社が従業員の労働力で利益をあげているのだから、その責任を従業員に全額押し付けるのは相当でないという考え方からでしょう。
この求償について、会社から身元保証人に請求する場合には、身元保証人が責任を負う範囲は、身元保証の上限額の範囲までとなります。
したがって、会社は従業員に対して250万円の請求ができるケースでも、身元保証人の上限が100万円となっていれば、会社は身元保証人に対して100万円しか請求できません。
横領とか盗撮などのような違法性はなくとも、会社の規則を守らず(決められた社内ルールを守らず)、そのことにより生じたミスにより被った損害は、個人あてに損害賠償を請求することも可能なのでしょうか?
峯岸優子弁護士の回答
従業員は、会社の指揮命令に従い労働する義務があるので、労働契約などで決められていたルール違反があれば、債務不履行ということになります。
ただ、通常発生しうる些細なミスは、会社の経営の中で想定されるものであり、会社は労働力により利益を得ているのであるから、ミスがあった時にいちいち従業員個人に賠償請求できるとするのは公平ではないと考えられています。
したがって、このような場合には、損害賠償は認められず、または一定金額に限定されることになるでしょう。
他方、従業員の故意または故意と同視できるような重過失の場合は、生じた損害の全額の賠償責任を負うケースもありえます。なお、身元保証人の責任範囲はQ1,Q2と同様、身元保証契約に記載した上限の範囲となります。
最低限のPOINTを押さえておいた上で、身元保証書もらわんと意味ないかんじだよね~💦
やっぱ、弁護士さんに相談したほうが安心だわあ😺
峯岸先生、ありがとうございました!